2011年03月23日

原発事故について

東日本大震災では史上最大の地震に続いて非常に破壊力のある津波、
そして深刻な原子力発電所の事故が起こりました。
その事故に関して、原子力をちょっとかじってるワタシが感じるところを書いてみたいと思います。

はじめに断っておきますが、ワタシはどちらかというと原子力サイドの人間なので
原子力反対派ではありません。
ではとりとめもない長文ではありますが、興味のある方は読んでみてください。



原子力発電所は何重にも安全対策が施されていて、
物理的な何重もの遮へいはもちろん、化学的にも何かあっても安全側に働いて
チェルノブイリのような暴走は起きません!と習ってきました。

実際、トラブルの際はECCS(Emergency Core Cooling System)というシステムが働いて、
暴走など起きるはずもなく"停止"、"冷却"、"閉じ込め"が確実に行われるはずでした。
理屈では。



今回の震災でもシステムがキチンと稼働すればこんなトラブルにはならなかったと思います。


でも機能しませんでした。


その理由が
非常用発電機が津波にやられて動かなかったから
だそうです。

クルマのエンジンでいうと渋滞中に水温上がってきたのに電動ファンが動かなかったため
ヘッドが歪んでガスケット抜けた!みたいなトラブルで、
電動ファンは2基掛けだったのに2基とも故障!
しかもその電動ファンの壊れた理由が、大雨で内部に水が入ったから。
というレベルで非常にお粗末な印象を受けました。

ホントの事情はもうちょっと複雑なのかもしれませんが、
少なくとも手間も金もかけたフルチューンのエンジンが電動ファンのトラブルでブローした
という例えは間違ってないと思います。


しかも壊れただけじゃなくて放射性物質が飛び散ってます!


それでも最初のうちはまだいきなり害があるレベルではなかったですよね。

事故としてはいきなり福島第一原子力発電所(1F)の1号機が爆発したもんだから
爆発という事実とその映像は相当ショッキングで、数日はテレビでも原発事故が常に流れてました。

感心したのは、事がおお事すぎるからか、どの局も専門家を呼んでしっかり意見を聞いた上で
比較的冷静に客観的な報道がなされていたということ。
枝野さんもしっかり内容を把握した上で冷静に会見に臨んでいたのが印象的でした。
最初何も見ずに喋ってましたもんね。


その1F-1号機の爆発では、原子炉格納容器は幸いにも無事でした。
これには本当にホッとしました。
下手すりゃチェルノブイリの再来ですよ!
けどそんなこともなく無事だったもんだからその後は爆発慣れ?
した感が漂ってたような気がするのはワタシだけ?


しかも日が経つにつれて徐々に情報が少なくなったりメディアの扱いも減ってきてますが
ニュースの扱いが少なくなったからって、トラブルが減ってるわけではないのです。
爆発・火災は知らん間に起こってるし、
農作物や牛乳から基準を超える放射能が検出されるようになりました。
牛乳はちょっと深刻かも・・・

つまり飛び散った放射性物質が周辺に降り注いでいると考えていいのではないでしょうか。
現地の方々は非常に深刻な状況の中の生活を余儀なくされていることと思います。


ところで原発事故の報道が始まってつい最近まで注目されていたのが放射線の線量ばかりで
放射能の飛散やその種類に関して何の情報も聞こえてこなかったのが気になってました。

発電所の建物という遮へいがなくなって放射性物質が放出されてるはずなのに、
吸い込んでしまうという視点の話は最初、全然ありませんでした。
それがようやく、「健康に影響はありません」以外に、どうやったら防げるかということが
テレビなんかでも語られるようになってきました。

裏をかえせばそれだけ事態はシビアになってきてるのだと思います。
今後も影響がありそうな地域の方は情報に敏感になってください。



さて、放射線は浴びないのがもちろんいちばんなので、
放射線源からは"素早く"できるだけ"遠ざかる"さらに"遮へいする"ことが大事です。

それに加えてもっと重要だと思うのが、"取り込まない"事だと思っています。
外から放射線を受けるだけならその時だけで済むのですが、
体内に取り込んでしまうとその物質が放射能を失うまで(放射線を出さなくなるまで)
被ばくし続けることになります。
いわゆる内部被ばくというやつです。
モノによっては何万年と放射線を出し続けます。
ヨウ素のように特定の部位に集まってしまうものもあります。


先日雨が降る予報が出たら急に慌てて雨に当たらないようにとか言われ始めましたが
放射性物質が雨と一緒に降ってきたら傷口から入り込むとか、汚染した手で飲食して
取り込まれるとかの可能性が大きくなるからです。

原子力発電所の現場なんかでも、水を使う作業の時は全身雨がっぱ状態で
呼吸もフィルタを通してと、装備がいきなり重装備になります。


飛び散った放射性物質は目に見えるわけじゃないので、汚染が懸念される地域の方は
極力外へ出ないとか外出時はマスクするとか雨に濡れないようにするとか
体内に取り込まないようにぜひとも注意していただきたいと思います。


そして国は今はまだどこが賠償するとかそんなこと力説するよりも
少しでも早く原発を安全な状態にできるように
地域住民と命がけで現場で活動されてる方々に対して
正確な情報発信と的確なリーダーシップを発揮してもらいたいものです。




でも菅はダメやな。

posted by しげぽん at 02:02| Comment(8) | 日記
この記事へのコメント
きっと、しげぽんさんも大変な状況なのかな?
と思っていました。

「プロ」ならではの解り易い情報、解説、
ありがとうございます。

この状況(無能な政府)下では、自分の身は
自分で守るしかないですからね。

「知っている」という事がどれほど「力」に
なるか、もう充分解ってるはず。。。
(日本国民はバカではない)
隠蔽だけはやめてもらいたいと思ってます。
Posted by まぐ at 2011年03月23日 09:00
今日のニュースで自宅地域の水道水が危険との事。東京でもすぐに現れるんですね。
万全なる安全対策も意外なところでボロが出てしまったようですね。早く安全な環境に戻ってほしいと思いますが、、
Posted by メカオンチ at 2011年03月23日 19:48
>まぐさん
ご心配ありがとうございます。ホント情報は日本の政府が迅速に隠さず出し続けてもらいたいものですね。
IAEAの独自調査情報が先に出たとかやめてもらいたいもんです。

しかし原子力政策は今後どうなることやらですわ…
しかしこの事故は日本はもとより世界に与えた影響も計り知れず。

せめてショボい安全対策や管理の原発が多くの国で乱立するのが避けられたと思いたいです。
けどこれでまた化石燃料バンバン燃やして地球温暖化まっしぐらもイヤですよね(^^ゞ

Posted by しげぽん at 2011年03月24日 01:51
>メカオンチさん
東京の水道でも影響が出始めましたか!
ワタシの文章をあとで読み直してみたらえらく危険をあおってるように見えますね(^^ゞ
でも避難地域を除いては通常生活する分には大丈夫だと思います。

ただ、毎日口にする水に危険性が現れたとなると注意すべきでしょうね。
甲状腺に溜まるといわれるヨウ素131は8日で放射能が半減するなど、放射性物質は放射線を出しながら崩壊し、安全な物質に変わっていきます。
気になるなら口にする前に溜め置きとかして時間をかせぐのもいいかもしれません。

一応専門家も「この程度では大丈夫」といってるなら、過敏に反応しないほうがいいと思いますが、かといって無関心に気にしないのもどうかと思います。
ホント放射能の害って目に見えないわ、すぐ現れないわでやっかいですが、それだけに冷静に正しい情報を得るようにしたいですね!
Posted by しげぽん at 2011年03月24日 03:16
フルチューンエンジンと電動ファンの説明、分かりやす過ぎるw
それにしてもしげぽんさんが原発関係のお仕事だとは初耳でした。

ネットで海外メディアの報道を見ると、
日本が本当にヤバい状態にあるのを知らないのは日本人のみ、
日本政府の現状軽視もそれを鵜呑みにする日本人もクレイジーだ!
って雰囲気ですよね。放射能ですから、相手は。

日本政府には、怒りを通り越して軽い絶望と恥さえ感じます。
総力を挙げて救助活動してくれるアメリカ軍にさえ、情報隠蔽。
これから、世界へどう顔向けすんだろう・・・。
Posted by 幕 at 2011年03月25日 00:12
>幕さん
年度末の激務で家のPC開いてなかったので気付くの遅れてすいません(汗)

実は元々原子力の人で、その後ソフトウェア開発な人になりましたが、またこっちの業界に出戻って参りました(^^ゞ

ところで福島第一はまた深刻さが増してますね。
現在の状況はかなり深刻なところまできてるように思います。

一刻も早く現場の努力が実って欲しいですし、政府、東電は責任の押し付け合いとかの政治的な駆け引きするんじゃなくて、しっかり連携してこの危機を乗り越えて欲しいですね!
Posted by しげぽん at 2011年03月29日 12:20
しげぽんさん かなり お久しぶりです 仕事で3〜4号機間で仕事してきました。
最近気温が高くて汗が目に入って大変でした いろいろ言われてますが がんばってます
5月にまた行かねばなりません 誰かがやらなければ 終わりはありません。
Posted by コータロー at 2011年04月27日 21:00
>コータローさん
お久しぶりです!
現地での作業は汚染水関係ですか?そうでなくても常時タイベック着用なのでしょうか。
これから暑くなってさらに辛い環境になるでしょうし、
通常とは比べものにならない線量もやはり心配ですね。

自分も要請されれば・・・の思いではありますが、
本人はよくても周りの心配や誤解の声も大変かと思います。
そうは言ってもホント誰かがやらねば、ですので現地で活動されている方には頭の下がる思いです。
次回も行くことが決まっているということなので、
現地での事故、ケガ、そして高線量の被ばくには気を付けて頑張ってください。
Posted by しげぽん at 2011年04月27日 22:30
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